■探訪の旅■ 2003年4月15日の昼過ぎ。僕は台北郊外の木柵へと車を走らせて、台湾茶市場の鉄観音を仕入れた茶荘へと向かった。 茶荘の社長とおかみさんとしばらくおしゃべりした後、彼らのお父上である張約旦名人に会いに猫空へと出発した。 僕の車におかみさんを載せて、探訪の旅が始まった。 まがりくねった山道。風光明媚で、気持ちのいい景色が続く。およそ25分くらい走った頃だろうか、おかみさんの案内で 小道に入り坂を登りきったら、物静かな谷の中に張さんの家が見えた。 まるで、この世の外の桃源郷のようなたたずまいだ。鳥がさえずりお茶の香りが香っている。 僕はのびのびとしてとてもさわやかな気分になってきた。 | |
張さんのお宅に着いた時、ちょうど張さんは畑に野菜の手入れに出ているとのことだったので、僕はカメラを取り出し、
おかみさんに案内してもらいながら
写真を撮りはじめた。室内には製茶に使う機械や道具がたくさんあった。 一通り撮ってから、家の外へ出て張さんを探しに畑へと向かった。 | |
畑の中で張さんを見つけた! 「ついに張翁に遭えた!」 張さんはちょうど鍬で竹を植えているところだった。 少しお話してから僕は張さんに「写真を撮らせて下さい」とお願いした。 「こんな格好で写真を撮るのはみっともなくはないかのう・・・」 (注:張翁の言葉が「日本昔話」口調なのは訳者近藤の勝手なイメージです(^^;) 「とんでもない!その方が自然でかっこいいですよ!とっても素敵です」 「そうかい?・・・じゃあ・・・」 と喜んで写真を撮らせてくれた。娘さん(おかみさん)とも一緒に撮って、張さんはちょっと嬉しそうだった。 | |
張さんは取材に備えて、お風呂に入って着替えると言って一足先に帰られたので、
僕はおかみさんに案内されて張さんの茶園に見学に行った。 前回僕たちが試飲した鉄観音の茶葉の一芯二葉を見せてくれた。 (下の写真がその鉄観音種の一芯二葉。) おかみさんがこの一芯二葉をくれたので、僕は大事に家に持って帰ったのだが、この茶葉は次の日まで香っていた。 清新なとってもいい香りだった。 僕の家族もいい香りだと喜んでた。 この後張さんの飼っている鯉を見せてもらったりしながら、ついに製茶の方法を教えてもらうために 張さんのお宅へ行くことになった。 |
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犬の激しい鳴き声が聞こえるので、何事かと思ったら、張さんの飼っているシェパードだった。 名前は『乖乖(おりこうさん)』。 しかし・・・とってもやんちゃで、見たところとてもじゃないけど 「おりこうさん」には見えなかった(笑)。 | |
部屋の中に入ってから、張さんを待った。 張さん、おしゃれをして出てきた。 「伝統的な製茶方法を教えて下さい」 とお願いすると、 「お安い御用じゃ。」 と、昔ながらの揉捻方法を実演して見せてくれた。 その後、茶摘みから製茶の過程を詳しく教えてくれた。 ここからはしばらく製茶方法の説明をしたいと思う。 ■木柵鉄観音の出来るまで■ ●茶摘み 茶葉は一番品質が良い一芯二葉で摘む。大体午前10時から午後3時までの間に行う。 | |
●日光萎凋 摘んだ茶葉をザルの上に載せ、日光に当てる。 気温は23℃位が丁度良く、約10分程経過したところで 茶葉のしおれ具合を見る。 色がほのかに黄色くなってきていたら、すぐに室内萎凋の棚の中に入れる。 (最初の写真の広場が日光萎凋をする場所) ●室内萎凋 一時間から二時間おきに手で掻き混ぜる。 これは水分を均一に蒸発させて、まんべんなく発酵させるため。 おかみさんの持っているザルが室内萎凋に使うザル。 写真の棚に入れて室内萎凋する。 | |
●炒菁 室内萎凋の後、茶葉が香りを放つようになったら、釜炒機に入れて炒菁する。 約5分ほどで炒菁は終わる。 ●初揉 炒菁が終わったら、茶葉を取り出して揉捻機にかける。 3〜5分位で取り出す。 この過程によって、茶湯の味わいが増す。 茶葉はきつくねじれた形になる。 | |
●乾燥 揉捻機から茶葉を取り出して、乾燥機にいれ乾燥させる。 最初は強火でだんだん弱くしていくというのを2回繰り返して、 水分が約50%程とんだら止める。 この過程を「走水焙」と言う。 ●搓捲 布で茶葉を包み、丸い形にする。長椅子の上に置いて揉み、茶葉をきつく捻じれて丸まった形にする。 焙煎機に入れて40℃位の温度であぶる。茶葉の発酵度焙煎度を見ながら再び取り出して揉む。 これを2、3回繰り返し、水分が20%位になれば、適度に丸まった形になる。 | |
●焙煎 布を開いて茶葉を焙煎機の中に入れる。 50℃で3,4時間ほど焙って乾燥した茶葉が完成する! 「木柵鉄観音」の出来上がり!だ! さて、製茶方法はここまで。 ちょっと長くなってしまったけど、こうして木柵鉄観音が出来上がる。 美味しいお茶を作るには、手間ひまがかかるもの。 是非一度、こうして丁寧に作られた木柵鉄観音を味わってみてほしい。 | |
最後に張さんの奥さんにも「一緒に写真を撮らせて下さい。」
とお願いしたら、 「恥ずかしいから嫌じゃ〜」とおっしゃる。 でも、更におしゃべりして打ち解けてくると、快く了解してくれた。 とっても楽しくて、あっという間に時間が経ってしまった。日が暮れかけてきたので、 おいとますることにした。 張夫妻と別れるのがすごく名残惜しい気持ちのまま、 おかみさんを乗せて木柵の茶荘へと向かった。 (終) | |
●後記● 日本の皆さんへ 「茶園探訪記 ☆木柵鉄観音編☆」はいかがでしたでしょうか? ご意見ご感想をお待ちしております!次回もお楽しみに! 王華璧より |